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本田美奈子.の最後のクリスマスコンサート

2004年12月のクリスマスコンサート、そのときの本田美奈子.の歌声をはじめて聴いた。

彼女が病床に臥す直前の、最後のコンサートだそうだ。成熟したまろやかなその歌声は、当時の観客を魅了したことだろう。知っていれば、私も聴いてみたかった。YouTubeなどで断片的に聞くことができるものもあるだろうが、この流れの中で、聴くことができるのはすばらしいことだ。

 

・・・・・

 

本田美奈子に最初に出会ったのは、私が当時勤務していたT社の夏のイベントであった。

 

1985年のデビュー直後のことだった。T社の関連会社であるT音楽工業からデビューしたばかりの小柄な女性であった。飲食をしながら、ステージから流れてくる音楽と彼女の歌声を聞いていたが、ただ、残念ながら、当時の曲はテンポが速くて、あまり強く印象に残ってはいなかった。その後も、実際はあまりフォローできていなかった。

 

それから約20年後のことである。あるとき、訃報が飛び込んできた。「Amazing Grace」とともに。この歌がとても美しく、心に残るようになった。また、歌っている人が本田美奈子であり、亡くなったと知った。驚いた。20年前の彼女からは、とても想像できない、美しい歌声だった。そして、この空白の20年間の彼女の業績を調べはじめた。

 

「天に響く歌―歌姫・本田美奈子.の人生」という書籍の中に、彼女の歩みが記してあった。歌声を収めたCDもいくつか店頭に並んでいた。そこには、それまで知らなかったさまざまな事柄が残されていた。

 

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いろんな曲がYouTubeに残っていた。彼女が、アイドルのソロシンガー、ガールズバンド、ミュージカル、クラシックというそれぞれに集中した時期があり、特徴的な曲を残している。なかでも、ミュージカルの舞台からクラシックへの挑戦をはじめた時期、何回か、コンサートを行っており、その映像が残っていた。ピアノ伴奏に合わせて歌う彼女の姿はとても印象的であった。もっと早く本田美奈子のことに気づけはよかったとさえ思った。

 

コンサートで、曲と曲の合間に聞こえる彼女のトークはまたすばらしかった。観客を気遣い、観客に合わせて、その場をリードしていく、それでいて、しとやかで和やかな雰囲気を創り出せるすばらしい女性アーティストだった。「ひめゆり」などに少しばかり、その痕跡を見いだせる。

 

本田美奈子.のコンサートの映像を探した。YouTubeには、断片的にいくつかのコンサート映像がアップされていた。だが、そのDVDは無かった。

 

DVDはデビューして2年後くらいのものは市販されていたが、ミュージカルからクラシックへの挑戦の時期のものは映像そのものがあまり残っていないようだ。DVD化もされていなかった。とても残念な想いであり、もしも映像が残っているのであればDVD化をと、強く願っていたところであった。

 

そんな折、今回、没後10年の節目に、冒頭のコンサートを含めたいくつかのコンサートでの映像がDVD化されたのだ。

 

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そして、最後のクリスマスコンサートの様子を初めて見ることができた。

 

このDVD3枚のうち、2枚めの後半にあるこのクリスマスコンサートは、特に、印象的だった。これを見聴きし、長い空白期間の未解明の一部がようやく埋まったという感じさえある。初めての映像であった。ぜひ、一度聴いていただきたい本田美奈子.の最後のクリスマスコンサートである。

 

(2016-1-14)

 

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天に響く歌―歌姫・本田美奈子.の人生

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ミニヨンと「君よ知るや南の国」

ふとしたきっかけで、ゲーテのこの詩を想い出していた。

 

それは、中学校時代のある日のことであった。親戚の家にお邪魔したとき、そこの本棚に、学生向けの小説の全集がおいてあった。そこの娘さんは文学少女だったのかもしれない。その本の中のひとつに、「少女ミニヨン」という題名の小説があったのである。薦めに応じて、しばらくその本を借りて読んだことを覚えている。

 

話のあらすじは、よく覚えていなかったが、中に掲載されていた詩のタイトルだけは、記憶の片隅に残っていた。それは、「君よ知るや南の国」であった。もともとの原作の小説のタイトルは「ウィルヘルム・マイスターの修行時代」ということだが、どうも邦訳の「少女ミニヨン」のほうが覚えられやすいらしい。

 

いろいろ調べてみて、昔の記憶を想い出したのだが、主なあらすじは、次のようである。

 

幼い頃に誘拐された少女ミニヨンは、ジプシーの旅回りの一座一行とともに、旅を続けるが、ひどい仕打ちにあわされていた。たまたまその光景を見ていた青年将校のウィルヘルムは、ミニヨンを救う。そして、ミニヨンは自分の身上を語りはじめ、生まれた国で聴いた歌を歌う.......。

 

君や知る、レモン花咲く国、

暗き葉かげに黄金のオレンジの輝き、

なごやかな風、青空より吹き、

銀梅花は静かに、月桂樹は高くそびゆ。

君や知る、かしこ。

かなたへ、かなたへ!

君と共に行かまし、あわれ、わがいとしき人よ。

 

君や知る、かの家。柱ならび屋根高く、

広間は輝き、昼間はほの明るく、

大理石像はわが面を見つむ、

かなしき子よ、いかなるつらきことのあるや、と。

君や知る、かしこ。

かなたへ、かなたへ!

君と共に行かまし、あわれ、わが頼りの君よ。

 

君や知る、かの山と雲のかけ橋を。

騾馬は霧の中に道を求め、

洞穴に住むや古竜の群れ。

岩は崩れ、滝水に洗わる。

君や知る、かしこ。

かなたへ!かなたへ!

わが道は行く。あわれ、父上よ、共に行かまし!

 

実は、最近、この詩のことを調べていくうちに、これが「ミニヨンの歌」として、ミュージカルとなり、上演されていたことを知った。フランスの作曲家アンブロワーズ・トマ Ambroise Thomas (1811-1896) により、歌劇(オペラ)にまでなり、最近では、天地真理(あまちまり)がミュージカルで歌唱している。(実際、YouTubeで見られるものもあった。)

 

この中にでてくる「南の国」は、「故郷」のことであり、故郷を離れて、旅を続けなければならない境遇にある少女ミニヨンのあこがれ(憧憬)を指しているものとおもう。ドイツの詩人ゲーテの作だが、ものすごいインパクトのある詩であった。

 

ジプシー(ロマニーというのが正しいらしいが)もまた、放浪の旅を続けている。そんな時代のできごとに、いまさらながら想いをめぐらせている。

 

(2011-1-4)

 

 

(追記)

 

この「ミニヨンの歌」「君よ知るや南の国」の詩は、もともとはゲーテのドイツ語の詩であったが、歌劇(オペラ)は最初にフランスの作曲家により、フランス語で作られている。また、その後も、オペラやミュージカルがつくられているが、訳詩もいくつかバージョンがあるようである。

 

ゲーテ「ミニヨンの歌」

 

→ こちらのテキストを参照して下さい。(Mignon)

 

 

(References)

 

この記事を書くにあたって、次のサイトを参考にさせていただきました。歌劇(オペラ)や、ミュージカルのあらすじなども紹介されています。

 

http://anotoki.seesaa.net/category/6091736-1.html

 

http://shisly.cocolog-nifty.com/blog/2007/04/post_3e3f.html

 

http://blog.goo.ne.jp/emerald_plum/e/cda5e85aa46b763581498a28fb13c510

 

http://homepage3.nifty.com/tbd-bake6022/midi/mignon.html

 

http://ww4.enjoy.ne.jp/~aqua98/opera/mignonR2.htm

 

 

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本田美奈子.と「ひめゆり」

いまからおよそ25年ほど前のことである。当時、私が勤務していたT社では、夏祭りのイベントが行われていた。そのステージに、ひとりの新人女性歌手がいた。彼女の名は本田美奈子(ほんだみなこ)、直接、本人を間近で見たのは、このときが最初で、そして最後であった。デビューしたばかりの彼女が、アップテンポの曲にのって、ステージで歌唱していたのを、いまだにおぼろげながら覚えている。ただ、当時は、実は、あまり興味がなかったのだった。テンポの早い曲、激しいリズムの曲を歌っているという感じがあって、なんとなく、そのままになってしまったのであった。

 

そして、20年の時が流れた。私の耳には、再び彼女の名が入ってきた。しかも、まったく別の形で。2005年11月、ひとりのアーティストが、急性骨髄性白血病で38歳で他界したというニュースが入ってきたのであった。本田美奈子.である。

 

訃報とともに、テレビで特集番組が組まれた。そして、私は、その時、彼女が歌っている「アメイジング・グレイス」という讃美歌を聴いたのである。それはそれは、すばらしい歌声であった。なんだか、心が洗われるような感覚で、聴き入ったのであった。およそ、20年以上前の彼女の姿からは、想像もできないほど歌唱力はすばらしいものであった。また、このことがきっかけとなって、再び、彼女の歌声を聴くようになったのだ。

 

調べてみると、本田美奈子.は、アイドル時代、グループを組んでいた時代、ミュージカルへの挑戦の時代、クラシック音楽との出会いなど、さまざまな経験をし、その時代ごとに、特徴のある歌を残していることがわかってきた。

 

私の好きなジャンルは、その中のミュージカルやクラシックといったところであろうか。特に、「つばさ」や「Time to Say Good Bye」は、声量が必要とされる難しい歌曲であるが、あの小さな体から発せられる歌声は、心を惹きつけられるものであった。

 

そのほかにも、「時」や「見上げてごらん夜の星を」や「Golden Days」など、好きな曲はたくさんある。CDは何枚か、買い求めた。あらためて、いま振り返って見ると、20数年前の歌ごえも、ミュージカルやクラシックに打ち込んだ時代の歌ごえも、どれもすばらしい。低音から高音まで4オクターブの音域の発声ができるというのも知った。

 

もう少し早く、これらのことを知っていたなら、彼女のコンサートを聴きに出かけていたかもしれない。残念である。

 

彼女のコンサートのDVDがあるかどうか、探してみた。デビューした当時から1, 2年のものはあるのだが、ミュージカルに挑戦した時代のものや、それ以降の時代のコンサートなどの映像は、DVDでは残っていないようで、唯一、インターネットの「YouTube」で見るしかないようだ。

 

その中のひとつに「ひめゆり」を歌っているシーンがあった。Blue Spring Club というファンクラブの集いのときのもののようであって、ファンのリクエストに応えるかたちで、彼女が伴奏なしでうたっていた。

 

最近、このミュージカル「ひめゆり」のひとコマをまとめた動画が、ミュージカル座のホームページに掲載されていることがわかった。「生きている」という曲を本田美奈子.が歌唱している。


http://www.musical-za.co.jp/COMPANY/movies/15honda.htm

 

彼女が旅立った後に、残っていた彼女の歌ごえに魅せられ、私はファンのひとりになったようだ。ミュージカルに打ち込んだ時代のひとコマや、クラシックを歌っているコンサートなどの映像があったら、これらをDVDにして販売してほしいと望むのは、私ひとりだけだろうか。いや、もっと多くのファンの方々がおられるに違いない、そう信じている。

 

(2010-7-14)