• 体験
スウィングガールズと長井線

山形県の南部、最上川の流域は、豊かな田園地帯であり、冬の積雪もそんなに多くはない。いまから、三十年くらい前のことであるが、私は仕事の関係で、長井というこの地を訪れる機会が何回かあった。当時は、新幹線も開通しておらず、上野駅から特急列車に乗って、福島経由で、赤湯まで行き、そこで長井線に乗り換えたものであった。

 

長井には、かつてT社の子会社だったM社があり、そこの方々にはたいへんにお世話になったものである。仕事が終わると、あちこちを案内していただいた。なかでも、最も印象に残っているうちのひとつが、最上川の河原での芋煮会(いもにかい)である。食材もさることながら、人々の素朴さがまた良い。

 

山形の、もっと端的にいえば長井の方言は、独特な親しみ深い味わいがあり、私の生まれ故郷の新潟の方言とはちょっと異なるが、親しみやすい心地よい響きのものであった。河原でのたわいのない会話で盛り上がるのは楽しいものだとおもったものであった。

 

ところで何年か前に、「スウィングガールズ」という映画が公開された。東北の片田舎、夏休み返上で補習授業を受けている女子高生たちが、サボリをするための口実として、ビッグバンドを始める。最初はやる気がなかったが、楽器で音が出せるようになってから、だんだんとジャズの魅力に引き込まれていく。そして、ついに本気でバンドを結成、というストーリーである。

 

この映画に出てくる田園風景は、私が三十年ほど前に見た、あの最上川の周辺の風景であり、とても懐かしさを覚えたものである。この映画のロケ地は、長井の近く、最上川の近くであったと思われる。長井線も、民営化されてからは、山形鉄道フラワー長井線と、その名称が変わった。電車も二両編成(あるいは三両編成だったか)のコンパクトできれいな車体となり、たしか、この映画にも登場していたのではなかろうか。

 

昔に見たあの風景と人情の遠い記憶が、この映画を見たとき、再び想い起こされて、懐かしさにかわったひとときであった。

 

もちろん、このスウィングガールズという映画も、楽しいものであった。なにより、ジャズというジャンルの音楽が新鮮であった。また、竹中直人の演技もすばらしい。印象に残る作品である。

 

(2009-10-17)

 

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