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    2009/07/04

    体験

    「不思議な石ころ」という別名で知られる電子セラミック部品は、いまではテレビや携帯電話をはじめ、ほとんどの電化製品に使われるようになった。セラミックコンデンサやチ ...

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プログラミングの楽しさと厳しさ

以前、バリスタ(電子セラミック部品のひとつで電圧非直線抵抗素子のこと)の開発に携わったことを書いた。材料開発もそうだが、サンプルの特性をきちんと正確に評価できる測定技術もまた必要になってくるのである。

 

当時、まだパソコン(PC)は8ビットであって、マイコンとも呼ばれてもいた時代のことである。バリスタの特性評価のひとつに、一定の電流を流したときの電圧降下を測定するという操作がある。この測定制御をコンピュータ(PC)を用いて行おうというものであった。

 

定電流電源をソフトウェアで操作し、電圧計で電圧を測定するのであるが、その値は数千ボルトにも達する場合がある。安全装置をつけて、しかも十分な接地を行なって、万が一にも感電事故などが起こらないようにしなくてはならない。

 

この測定制御プログラムを作成したときのことを少し書いてみようとおもう。

 

バリスタのサンプルは、例えて言えば、セラミックの円板の上下に電極を取り付けた形状であって、これらを銅板の上に整列させて並べておき、電源の接地側に接続しておく。

 

電源の高圧端子側を絶縁体でうまく絶縁して、ハンドリングできるようにし、プロッタのペンのかわりに取り付けて、ソフトウェアで、指定したX座標、Y座標の位置に動かし、サンプルの上部に取り付けた電極に接触させる。そして、定電流電源を駆動させて、一定の電流を流し、電圧計に表示された値を読み込む。そして、電流値を変えるか、X、Y座標を指定し直して再度測定するか、という操作を繰り返す、というシーケンスである。

 

このような内容のコーディングを行なったのである。

 

問題点は多くあったが、いちばんの問題は、コンピュータの誤動作であった。

 

8ビットマイコンは、一応、BASICという言語でソフトのコーディングができた。いろんな処理をサブルーチンに書き上げて、メインのプログラムから呼び出し処理をするのであるが、ときどき、誤動作でフリーズすることがあった。

 

原因は、ノイズだとおもわれた。端子が接触し数千ボルトのON/OFFをするときに、ノイズが発生するのか、それとも外来のノイズだったのか、とにかく途中で止まってしまう。

 

どこで止まるのかを観察していると、測定制御プログラムのメインルーチンからサブルーチンに制御が移り、実行処理の後、メインルーチンに戻れなくなっている。ノイズで、コンピュータのメモリのスタック領域が壊れているのだと気づいた。

 

そこで、重要な処理はすべてメインルーチンに書くようにした。簡単な計算などはサブルーチンに書いてもよいが、安全に行うべき高電圧のON/OFFやデータの読み込みなどは、メインルーチンに書くようにしたのである。

 

ようやく、誤動作せずに測定系が正常動作したときは、正直ほっとしたのであった。

 

もちろん、現代は、コンピュータも32ビットや64ビットが主であり、コーディングソフトウェアも進化しているはずなので、こんなことは滅多にないとおもわれる。

 

プログラミングは楽しい面もあるが厳しい面もある。こんな経験をさせてもらったことも、いまでは懐かしい想い出のひとつになっている。

 

(2010-1-21)

 

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24年前の夢

「不思議な石ころ」という別名で知られる電子セラミック部品は、いまではテレビや携帯電話をはじめ、ほとんどの電化製品に使われるようになった。セラミックコンデンサやチップ抵抗、チップコイル(インダクタ)などの小さいものから、スピーカ、ブザーなどのある程度の大きいものまでいろいろある。

 

私が、セラミック(陶磁器)と意識して初めて出会ったのは、もう30年以上前のことであった。ある時、ある機会に、透明な数センチ角の薄い板を見せてもらったのだ。ガラス板ではないという。それは、透光性アルミナと呼ばれるもので、白い粉末を焼き固めてできたものであったと聞かされた。

 

それを機に、セラミックに興味をもったのである。そして、希望して、電子セラミックスの開発を行なっていた部署に異動させてもらい、そこで電子セラミックスの勉強をさせていただいたのであった。

 

そのときは、まだこれらの電子セラミック部品がどこに使われ、そして将来、どのような発展を遂げるかは、未知数であった。でも可能性を秘めた材料部品として、期待していた。

 

セラミックの作り方は、基本的には昔から伝わっている陶器、磁器と同じ原理で、細かい粉末を固めて焼くという方法に変わりはない。しかし、電子セラミックの場合は、それらのプロセスを細かく制御するのである。例えば、配合の割合、粉末の粒径、仮焼、脱脂、本焼などの数値制御をし、そして、そこに機能を付与するのである。

 

当時、私は、あるセラミック部品材料の開発に携わっていた。そこで、開発が進み、ある区切りがついたとき、米国の学会でそのことを報告したことがある。そのときに、あわせて作った将来のビジョン(ロードマップとでもいうのだろうか)に、「壁掛けテレビ」の時代がやってくると記した。24年前のことである。

 

まだそのときは、パソコンが8ビットから16ビットへの移り変わりの時代だった。もちろん、ディスプレイはあの重たいブラウン管が主流であった。当時は「壁掛けテレビ」などはまだ夢のようだった。でも、いつか時代は進歩し、実現するときがくるに違いないとおもっていたのである。

 

小さな電子セラミック部品の開発をすすめながら、世の中の移り変わりを見ていたことになる。それから、小さな画面の液晶がではじめ、やがてそれがカラーになっていく様子を目の当たりにした。ハンドヘルドコンビュータや、ラップトップコンピュータとよばれた製品があらわれた時代で、最初白黒だった画面がやがてカラーになって見やすくなった。

 

そして、いまでは、液晶やプラズマディスプレイで大型サイズの画面の薄型テレビができ、もちろん壁掛けにもできるようになってきた。24年前に描いた夢は現実となった。

 

これらの薄型テレビにおいては、電子セラミック部品は、主役ではない。脇役である。しかし、とても重要な役割を果たしていることに気づかされる。

 

今後、どのように発展していくのだろうか。そして、これら脇役の「不思議な石ころ」は、どのような活躍を見せてくれるのだろうか。期待している。

 

(2009-7-4)

 

 

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