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    2009/07/04

    体験

    「不思議な石ころ」という別名で知られる電子セラミック部品は、いまではテレビや携帯電話をはじめ、ほとんどの電化製品に使われるようになった。セラミックコンデンサやチ ...

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展示会で見つけた「バリスタ」

10月の初めに、CEATEC JAPANという展示会があり、ことしは土曜日が入場無料ということもあって出かけてみた。仕事半分、個人的な興味半分ではあるが、会場が広かったこともあり、ほぼ四・五時間をかけてあちこちを見ていた。

 

通信分野の展示エリアでは、携帯電話のキャリアの展示とか、モバイルコンピュータの展示とかがあって興味深いものであった。PCのデザインもさまざま、かわいいアニメのキャラクタをデザインしたPCなども展示されていた。新しいOSも、ソフトウェアの展示も、また、目を引いた。

 

電子黒板のデモ  キティちゃんがPCに

 

大型テレビの展示エリアは、見学の人々が多く、あちこちに待ち行列が目についた。また、電子部品の展示エリアも、私には興味深いものがあった。

 

ある電子部品の会社のブースで懐かしいものを見つけた。昔ながらのリード付き電子部品のひとつで「バリスタ」とよばれているものである。

 

二十年ほど前、ニューセラミックスの時代がやってきたと世間が騒いでいた頃があったが、私は、その頃に仕事で携わったことがある「バリスタ」を思い出していた。

 

バリスタは電圧非直線抵抗素子ともよばれている。

 

オームの法則は、抵抗素子に電圧を印加すると電流が流れるが、このとき、電流は電圧に比例し、その比例係数が抵抗値である、というようにいうことができるが、ふつうの抵抗素子では、抵抗値は電圧の大小によりほとんど変化しない。

 

しかし、この抵抗値が電圧により大きく変化する性質をもっている素子が非直線抵抗素子、「バリスタ」なのである。

 

身近なところでは、テレビの内部の電源回路のそばにおかれている。直径5ミリから10ミリメートルくらいの大きさの円板型の部品である。

 

ふつうの100Vの電圧では、ほとんど電流を流さない(抵抗値が高い)が、雷などの外来ノイズで異常に高い電圧になったときには、電流を流して(抵抗値をうんと低くして)中の回路を守る(保護する)働きをするのである。半導体の仲間である。

 

また、大きなところで言えば、変電所などに避雷器が設置されているが、この避雷器の中にも使われているのである。

 

バリスタにもいろいろな材料があるが、私が昔、携わったのは、酸化亜鉛を主成分とする電子セラミックスであった。

 

酸化亜鉛は、化粧品の「おしろい」の原料としても良く知られている。この主成分に、ごくわずかの成分を加えて、混合し、プレス成形して焼結する。ここまでのつくりかたは、いわゆる陶磁器と基本的には同じである。そして、電極として銀ペーストを焼き付けて、リード線を取り付け、周囲を樹脂で被覆して製品としてできあがる。

 

詳しい製法は、いろいろな文献や特許にあるので、ここでは触れないが、焼結後に炉から取り出すとき、そして電極を取り付けて、電気的な性質を測定評価するときは、いちばん緊張が高まるときである。設計どおりのものが得られたときはうれしいが、期待はずれのときもあった。おもいがけない珍しい現象に出くわしたときもあった。

 

「バリスタ」は、私にとって、製品開発のおもしろさ、楽しさと一方で厳しさを経験させていただいた最初の電子部品であった。二十年ほど前に携わったセラミック電子部品が、いまでもあるメーカーで作り続けられ立派に機能していることは、うれしさ以外のなにものでもない。

 

このようなおもしろさは、実際に足を運んでみないとわからないかもしれない。

 

展示会では、通信・電話やコンピュータ関係の展示が多くあった。また機会を見て載せたいとおもっている。

 

展示会では、このような光景も多く見られた.....。

 

(2009-11-18)

 

 

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24年前の夢

「不思議な石ころ」という別名で知られる電子セラミック部品は、いまではテレビや携帯電話をはじめ、ほとんどの電化製品に使われるようになった。セラミックコンデンサやチップ抵抗、チップコイル(インダクタ)などの小さいものから、スピーカ、ブザーなどのある程度の大きいものまでいろいろある。

 

私が、セラミック(陶磁器)と意識して初めて出会ったのは、もう30年以上前のことであった。ある時、ある機会に、透明な数センチ角の薄い板を見せてもらったのだ。ガラス板ではないという。それは、透光性アルミナと呼ばれるもので、白い粉末を焼き固めてできたものであったと聞かされた。

 

それを機に、セラミックに興味をもったのである。そして、希望して、電子セラミックスの開発を行なっていた部署に異動させてもらい、そこで電子セラミックスの勉強をさせていただいたのであった。

 

そのときは、まだこれらの電子セラミック部品がどこに使われ、そして将来、どのような発展を遂げるかは、未知数であった。でも可能性を秘めた材料部品として、期待していた。

 

セラミックの作り方は、基本的には昔から伝わっている陶器、磁器と同じ原理で、細かい粉末を固めて焼くという方法に変わりはない。しかし、電子セラミックの場合は、それらのプロセスを細かく制御するのである。例えば、配合の割合、粉末の粒径、仮焼、脱脂、本焼などの数値制御をし、そして、そこに機能を付与するのである。

 

当時、私は、あるセラミック部品材料の開発に携わっていた。そこで、開発が進み、ある区切りがついたとき、米国の学会でそのことを報告したことがある。そのときに、あわせて作った将来のビジョン(ロードマップとでもいうのだろうか)に、「壁掛けテレビ」の時代がやってくると記した。24年前のことである。

 

まだそのときは、パソコンが8ビットから16ビットへの移り変わりの時代だった。もちろん、ディスプレイはあの重たいブラウン管が主流であった。当時は「壁掛けテレビ」などはまだ夢のようだった。でも、いつか時代は進歩し、実現するときがくるに違いないとおもっていたのである。

 

小さな電子セラミック部品の開発をすすめながら、世の中の移り変わりを見ていたことになる。それから、小さな画面の液晶がではじめ、やがてそれがカラーになっていく様子を目の当たりにした。ハンドヘルドコンビュータや、ラップトップコンピュータとよばれた製品があらわれた時代で、最初白黒だった画面がやがてカラーになって見やすくなった。

 

そして、いまでは、液晶やプラズマディスプレイで大型サイズの画面の薄型テレビができ、もちろん壁掛けにもできるようになってきた。24年前に描いた夢は現実となった。

 

これらの薄型テレビにおいては、電子セラミック部品は、主役ではない。脇役である。しかし、とても重要な役割を果たしていることに気づかされる。

 

今後、どのように発展していくのだろうか。そして、これら脇役の「不思議な石ころ」は、どのような活躍を見せてくれるのだろうか。期待している。

 

(2009-7-4)