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雪にまつわる想い出

(昭和59年の大雪、新潟県妙高市にて)

 

二月三日、関東地方には久しぶりに積雪があった。こちらで白い雪景色を見るのはめずらしくはないが、雪を見ると思い出すのが、田舎にすんでいた幼少期から小学生くらいの頃に経験した大雪である。

 

雪は一晩で七十から百二十センチメートルは積もった。朝起きてみると玄関先が既に雪でふさがれていたことをよく覚えている。当時は、家の前の道路も舗装されていなくて、集落から集落の間は人が通れるように、朝早くからかんじきを履いて道付けを交替で行なっていたものだ。そうしないと、道が確保できないし、小学校へも通えなくなってしまう。

 

何年か経ち、やがて道路が舗装され雪が積もってもブルドーザーで雪かきをしてもらえるようになった。ところが、ブルドーザーの通った後は、キャタビラの跡がすべりやすく、何度も転倒しそうになったものである。そればかりか、雪の壁が家の玄関前にできるので、雪かきをし、背丈以上もある高い雪の壁をくり抜き、通路を確保する必要があった。

 

そういえば屋根の雪降ろしも一冬に六回は行なったものだ。屋根の上には百五十センチメートルくらいの高さで雪が積もっている。それをスコ(スコップ、シャベル)で下に落とす(放り投げる)のである。屋根の雪の上層部はやわらかで軽いが、下はザラメ雪(シャーベット状)でとても重い。それをすくって投げ飛ばすのだから、一日もすれば重労働であった。さらに家の周りに落とした雪は、窓を塞ぎ、家の中を暗くしてしまう。

 

また、不均一に雪に囲まれていると、家そのものがゆがみ、倒壊する危険もあった。なので、落とした雪を平らに均して家の明かりを採り、家の外回りをしっかりと踏み固めるという作業を必要とした。

 

雪を見ると昔を想いだす。寒さはどこも同じ。手がかじかむ感覚は、スキーを担いで登下校した小中学校の頃にいやというほど味わっている。なので、いま関東地方に住んでいて、多少の雪が降っても、寒くても、当時の辛さを思い出せばなんのことはない。

雪にまつわる想い出のひとつである。

 

(2008-2-24)